中村由信氏のスナップフォトの決定的瞬間
ユーモア人物編U
出会い頭のスナップなど滅多にうまく写るわけがないので、話しかける写し方をよくするが、決してウソを写しているわけではない。こっちが話しかけることによって、相手が自然に動いてくれる。「………してくれ」などいえば、それはスナップ写真ではなくなるし、表情だって決して生き生きしないはずである。
のんびりした写真やユーモラスな狙いがある場合には、重心を画面の下の方に持ってくるとゆったりした気分になる。水平線や他の直線も水平にすると、ますます絵の安定感が良くなる。
1日に数回しかないバスだから、乗り遅れたら一大事。大声を出して追いかければ止めてくれる。バスが見えてから家から出るおばさんがいると聞いて、運転手さんに協力してもらい待たないで発車する。
ある展示会場で見つけたふとした瞬間の面白さで、適当な足が来るのを待っていた。
親しい美容院で見かけたので、花嫁さんが支度に来ることがあったら知らせてくれる様に頼む。よほど運が良くなければ、出会いがしらに面白いものなど写せる筈がない。
ヌード撮影会前日に、モデルが駆け落ちをした。急遽代役となったが、気乗りしないカメラマンを奮起させる。

小さな鳥居をくぐるユーモラスな光景を、16mm魚眼レンズを使用して誇張している。恥ずかしがる女性に、冗談を山ほど言いながらの撮影であった。[熊本県宇土市粟島神社]