中村由信氏のスナップフォトの決定的瞬間
漁師の子
新宅力男君は、瀬居島(せいじま)の漁師の四男坊である。親の稔さん夫婦は仲間の漁師たちと同様、島へ子供を残したまま小豆島附近へ延縄漁(はえなわりょう)に出掛けてしまい、ひと月の大半を留守にする。そこで子供たちは羽根をのばし、勉強なんかそっちのけで遊びまわる仕儀となる。その例にもれず力男君も、天衣無縫(てんいむほう)の腕白に明け暮れる毎日である。
*瀬居島は塩飽
(しわく)諸島東南端の島でしたが、現在は四国本土と陸続きになっています。
ビー玉は貴重品、大半はどんぐりで代用する。
力男君はクラス一の腕白なので、先生の目のとどく最前列が席。しかし灯台もと暗し。
遊び時間にわざと友達に「小便」をひっかけたので罰をうけるが、改悛の情さらになく、放課後こってりとお説教。
ひょんなことから始まるのが、子供の喧嘩。ファイト満々、年上のガキ大将に向っていき、あげくの果ては「返り討ち」。
(3枚組写真)
連続写真(フォト・シークエンス)
ごく単純な形の組写真で、何かが起こっているのを、次々と写して並べる方式である。そんな明快な手法だから、組写真においては一番多用されている。
中村由信著「私の組写真作法」より